おっさん、普通が幸せということに気づく ~夜勤~
夜の11時。眠気を感じたので寝ることにした。
閉めきりだと暑かったので側の小窓を開けると、涼しい夜風が入ってきた。
6月のはじめ。日中は夏のような高温だが、夜はまだ涼しい。
電気を消すと、部屋が所々青白く照らされていた。
窓から空を見上げれば、黒々とした夜空に丸々とした月が煌々と輝いていた。やっぱ月の光ってやわらかくて綺麗だなぁ。
寝具に横たわり目を閉じ、ふと以前の生活を思い出す。
僕は以前、交代勤務の仕事をしていた。その頃は、こう心地よい気持ちで床につくことは稀だった。
現場は24時間体制で、8時間勤務で3人が交代制で回していた。
大まかに言うと朝番、昼番、夜番といった感じ。
それが1週間ごとにローテーションで回ってくる。
深夜番の時、だいたい深夜から朝まで働き、僕の場合就寝時間は昼頃。陽が沈むころに目を覚まし、勤務時間になったら仕事へ向かう。
生活バランスが崩れる崩れる。
そのためか、昼寝ても疲れが取れない。寝た気がしなかった。
周りが五月蠅くて眠れないこともあった。
休日になっても一日目は体が日中型のサイクルになれず不調で、2日目に何とか元通りになる。
で、3週間後にはまた夜勤務が回ってくる。
太陽の光が体にもたらす影響の大きさを、身をもって知ったよ。太陽は偉大だ‥‥(T)
最近、交代勤務の仕事の頃に同僚だった人と話す機会があった。
開口一番、近々辞めると言われた。
「最近、夜勤務時に眠れなくなってきた。もう体力的にキツイ」
そういう彼は僕と同年代か、少し下くらい。聞いたことは無いが、だいたい30前後だろう。
僕は早いうちに交代勤務の仕事を辞めてよかったかもしれない。
給料は、月に2~3万くらい交代勤務の頃の方が高かったけど、やはり健康には替えられない。
金の事を色々聞いてくる後輩に、
「交代勤務って儲かっていいですね」
と言われたことがあるが、僕はおすすめはしない。
(こいつ、ちょくちょく月給とか年収とか貯金額とか聞いてくるんだけど、なんなの‥‥)
一度経験しなければわからないことはある。夜勤の経験をするというのも人生においてはプラスになったと思う。おかげで、僕にとっては普通の昼型の生活が合っていることが早い段階で分かった。
大勢が何気なく享受している普通の形、その中にはとてもありがたいものも混じっていると思う。
夜に寝ることができる。そんな普通は当然のことを、僕は幸運だと布団の中で思った。
‥‥後輩の事を考えたら、いつもより寝入りが悪くなった。気の持ちようは万時において重要だね。嫌なことを考えたり、思い出したりすると寝づらくなる‥‥。