おっさんの日常 ~30半ばの春、知らない方が良い事を知る~
僕の業務の一つに設備点検がある。工場内外の設備の圧力計や流量計などの数値を記録する。数値の変化から設備異常の兆しが見られたら、そこを調べて故障を未然に防ぐ。
夏は酷暑、炎天下の中を歩き回る。
冬は極寒、かじかむ手を水で洗うとあったけぇ‥‥。
もちろん、雨が降ろうが、強風だろうが、雪だろうが点検をする。
突風で傘も壊れる。
ハクビシンがシャッター内に侵入していて、開けた途端飛び出したりもする。
設備の隙間に子猫も居つく。
つい餌を買って与えてしまうと、翌日には3匹に増える。
夏、冬は正直嫌だが、良いと思える時期もある。春は本当にイイ。
3月になり温かくなってくると、空気がやわらかくなった気がする。
敷地内に点々と鮮やかな新緑が顔を出し始める。雑草だ。
今まではシルバー派遣のじいさんが駆除していたのだが、別の人に替わってからはけっこう、ぼうぼうだ。
だがそのおかげで気づいたことがある。
ただの雑草と思っていたそれらにも、当然個性があるということ。葉の形、大きさ、そして花の色形も違う。正直、咲く花が違う事に気づくまで、どれも同じ種類の雑草だと思い込んでいた。
その中で一つ、特に気になった花があった。
屈んで顔を近づけないと形も判別できないほど小さい花。中央が黄色く、その周りが白くなり、花弁は4枚。綺麗な青色だった。
春の訪れと共に芽吹いた生命。なんとも微笑ましい。そこを通る度に、踏みつけないように気を付けて跨いだ。
休憩中、あの花の事が気になりスマホで調べてみた。
画像検索で、「雑草、青、小さい花」。見つかるだろうか。
あった。緑の草の上、無数に群生する青い、小さな花。形もこんなだった。
少し説明が記載されているものがあった。
「オオイヌノフグリ」それがこの雑草の名前だった。
名前があるとは思わなかった。どんな意味なのだろう?
オオイヌノ‥‥検索結果が出た。「オオイヌノフグリ 由来」を選択。サイトをクリック。
‥‥。
‥‥誰だ、この名前つけたの。
それ以降、その花を見るとちょっと微妙な気持ちになった。
むやみやたらと関心を持つのも考えものかもしれない。